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IEEE 802.3 と Ethernet

改訂: 2005-04-11

2 つの呼称

LAN の規格として普及する IEEE 802.3 があります。人によってはこの規格名より Ethernet (イーサネット) と呼ぶ方が馴染むかもしれません。一般的にこれらは LAN の同じ規格を指しますが、実はこれらは全く同じものではありません。

IEEE 802

IEEE 802.3 プロトコルについて知るには、これを制定する組織である IEEE 802 について知ることが大きな助けになります。IEEE (Institute of Electrical and Electronic Engineers) とは、電気、電子分野の様々な技術標準の制定を行う組織です。組織は複数のグループに分かれており、その中でも IEEE 802 は `LAN/MAN Standards Committee' と称されるグループで、LAN や MAN (*1) に関する技術標準を制定しています。IEEE 802 はさらに複数のワーキンググループ である IEEE 802.x に分かれており、それぞれ異なる技術の標準化作業を行っています。ここで混乱を招くようですが、IEEE 802.x という言葉はこれを制定した組織名と、その制定された規格名の両方を指します。IEEE 802 では OSI 参照モデル (*2) の物理層、データリンク層に関する技術標準を制定しており、特にデータリンク層を LLC 副層 (Logical Link Control sublayer) と MAC 副層 (Media Access Control sublayer) の 2 層に分けて定義していることに特徴があります。下位層となる MAC 副層は物理層に依存したリンク制御を行い、上位層となる LLC 副層は物理層に依存しないリンク制御を行います。LLC 副層は MAC 副層の違いを吸収し、ネットワーク層からみたデータリンク層のインターフェイスを統一します。そして LLC 層のプロトコルを IEEE 802.2 で、MAC 層と物理層のプロトコルを IEEE 802.3 以降で規格化しています。

IEEE 802 構成図

IEEE 802.3 と Ethernet

IEEE 802.3 は通称 Ethernet と呼ばれますが、厳密にはこれらの規格は別のものを指します。IEEE 802.3 の仕様書のタイトルは `Carrier sense multiple access with collision detection (CSMA/CD) access method and phigical layer specifications' (CSMA/CD アクセス方式と物理層の仕様) であり、`Ethernet' という言葉は仕様中には用いられていません。Ethernet とは DEC 社、Intel 社、Xerox 社の 3 社により 1980 年に制定された規格であり、これを標準化したものが IEEE 802.3 です。機能的にみれば、IEEE 802.3 と Ethernet はほぼ同等ですが、少なからず違いはあります。IEEE 802.3 は物理層とデータリンク層の MAC 副層として位置づけられているため、そのデータ部には IEEE 802.2 で規定される LLC パケットが含まれることを前堤にしています。対して、Ethernet は物理層とデータリンク層そのものとして位置づけられているため、データ部にはネットワーク層のパケットが含まれることを前堤にしています。

IEEE 802.3 と Ethernet 比較図

Etehrnet は IEEE 802.3 による標準化が行われて以降、規格作業は停止しています。現在よく使用されている 100BASE-TX や 1000BASE-T は IEEE802.3 で規定されている規格です。しかし現在主流となっている IP ネットワークでは、過去との互換性を維持するために Ethernet タイプのデータ部を持ちます。つまり LLC 副層を省略し、ネットワーク層の IP パケットを直接含んでいます。これは本来 IEEE 802.3 で想定された利用法ではなく、Ethernet で想定された利用法であり、Ethernet 時代の影響を今でも大きく受けています。LLC 副層の省略は IEEE 802.3 と IEEE 802.2 (LLC 副層) を使用する本来の想定より、IEEE 802.2 の提供する機能 (シーケンス制御、エラーフレームの再送、受信確認など) の分だけ、機能的に省略されることになります。しかし元々 Ethernet ではこれらの機能は提供されておらず、トランスポート層である TCP (*3) に依存していたため特に問題とはなりません。IEEE 802.3 と Ethernet という呼称が混同して扱われるのは、このような背景があるためなのです。